“ 感情のままに左右される人間は、

  自分自身の主人ではなく、偶然の力に支配される。”

            ─ バールーフ・デ・スピノザ

***

 人間は「感情の生き物」だと言われます。

 商品のマーケティングでも、リーダーシップでも
 重要なポイントの1つに必ず数えられるのが、この「感情」です。

 でも、この「感情」というもの。
 とらえどころがなくて、とても厄介なんですよね。

 特に「怒り」や「不安」といった
 ネガティブな感情は対処が難しく、

「いつも振り回されてしまう」という人も
 多いのではないかと思います。

 本日は、そんな「感情」の中でも、
 特に「ネガティブ」と呼ばれるものを
 “味方につける”ためのヒントをお伝えしていきます。

 【感情に関する5つの切り口】

  1. 人間の基本感情は4種類しか無い
  2. 感情を“克服”してはならない
  3. “ネガティブな感情”というものは無い
  4. “敵”である感情の特徴
  5. 感情を味方につける3ステップ

【1】人間の基本感情は4種類しか無い

「不安」や「嫉妬」、「怒り」など、
 ネガティブな感情を嫌う人は多いと思います。

「できることなら無くなってしまえばいいのに…!」

 そう、思うことも多いですよね。

 でも、こういったネガティブな感情は、
 人間が生きていく上で必要なものなんです。

 その証拠に、人間の「基本感情」と呼ばれるもののうち
 なんと「75%」が、“ネガティブな感情”となります。

 <4つの基本感情>
  ・怒り
  ・悲しみ
  ・不安
  ・喜び

 これは、人間の進化の歴史を考えると納得がいきます。

 人間は太古の昔から「逃げ続けて」進化してきた生き物です。

 海の生物が爆発的に進化を続けているとき、
 人間の祖先は戦いを避けて陸に上がりました。

 恐竜が大陸中を支配しているとき、
 人間の祖先は隠れる術を覚え、戦いを避けてきました。

 ネガティブな事柄に敏感でなければ、
 生き続けることができなかったのです。

 ですから、こういった“ネガティブ”な感情が
 生じてしまうのは仕方のないこと。

 こういった感情を、いかに味方にしていくか。
 その方法論を身につけることが、とても大切です。

【2】感情を“克服”してはならない

 ここまで書いてきたような“ネガティブ”な感情を、
 人は“克服”しようとします。

「怒り」が生じないように。
「不安」を感じないように。
「悲しみ」に暮れないように。

 そして実際に「感情を“克服”した」という人も、
 世の中には存在します。

 しかし、「感情を“克服”することはできない」と
 僕は考えています。

 なぜなら感情は、「無意識」の世界の話だからです。

 人間には
「意識できる部分(顕在意識)」と、
「意識できない部分(潜在意識)」があると言われています。

 そして、この「意識できる部分」は、
 意識全体の「わずか3%」と言われているのです。

 3%のもので、残りの97%をコントロールできるとは、
 僕には思えません。

 “克服した”というのは、実際には“克服した”のではなく、
「見ない(認識しない)ことにした」というのが
 本当のところではないか、というのが僕の考えです。

 もちろん「見ない」という方法でも、
 感情の影響から逃れることはできます。

 しかし実は、その方法では、
 “大きなもの”を失ってしまうのです。

【3】“ネガティブな感情”というものは無い

 ここまでの文章では、
 “ネガティブな感情”という表現をしてきました。

 しかし実は、感情そのものには
「ネガティブ」も「ポジティブ」もありません。

「感情とは何か」といえば、
 それは単なる“エネルギー”です。

 種類や特徴は違うものの、どれも人間の行動を生み出し、
 何かを成し遂げるためのエネルギーには変わりありません。

 “ネガティブ”とは、
 こういったエネルギーの使い方を間違えたときに
 “生じる行動”のことを指しているのです。

 例えば「怒り」という感情そのものには、
 ネガティブもポジティブもありません。

 生じた感情エネルギーを、
「誰かを傷つける」「怒鳴り散らす」といった
 行動として消化することが、“ネガティブ”と呼ばれるのです。

 しかし逆に、このエネルギーを自分自信の「行動」に向けることができたら、
「怒り」というものは大きな「行動する力」を与えてくれます。

 例えば「悔しい!次こそは見返してやる!!」と言って、
 鍛錬に打ち込むような状態が、そうですね。

 だからこそ、感情を「見ないこと」にしてはならないのです。

 人間の基本感情の75%はネガティブなもの。

 それを活用しないということは、
 大きなエネルギーを手放すことになります。

 では、どうすれば良いのでしょうか?
 まずは、それぞれの感情の基本的な特性を知ることが大切です。

【4】“敵”である感情の特徴

「怒り」「悲しみ」「不安」という3つの感情には、
 それぞれ基本的な特性があります。

 特性というのは
「その感情を味方にできていないと、どんなことに使われがちか」
 ということです。

 それぞれの感情は、野放しの状態では
 次のような行動に使われる傾向があります。

 <3つの感情の基本的な特性>
  ・怒り : “他者”を攻撃する
   →怒鳴る・他者を傷つける・恨む etc…

  ・悲しみ : “自分”を攻撃する
   →落ち込む・自己嫌悪 etc…

  ・不安 : 行動を“止める”
   →後回し・挑戦しない・言い訳をする etc…

 こういった行動にエネルギーが使われることを、
 “ネガティブ”と呼ぶのですね。

 これらの感情を“ポジティブ”に使うためには、
 それぞれの感情の“矢印”を逆転させてあげます。

 <3つの感情の矢印を逆転させる>
  ・怒り:“他者”を攻撃する → “自分”を変える
   →行動・使命感 etc…

  ・悲しみ:“自分”を攻撃する → “他者”を受け容れる
   →愛情・許し・優しさ etc…

  ・不安:行動を“止める” → 行動を“開始”する
   →スピード・挑戦・徹底・正確さ etc…

 それぞれの感情は、正しく活用すると、
 大きな力を与えてくれます。

 感情と向き合い、共存することが、
 真の意味で、自分の能力を最大限に発揮するのです。

 そうは言うものの、この方法を身につけることは
 簡単なことではありません。

 だだ、努力次第で身につけることも可能です。

 実践をしていくときには、
 次の3ステップを試してみてください。

【5】感情を味方につける3ステップ

「練習したことがうまくなる」

 これは、どんな物事にも当てはまる、
 上達のための原理原則です。

 それはスキルだけではなく、感情の部分でも同じこと。

 ついつい誰かを怒鳴ってしまう人は、
 “怒り”のエネルギーを“怒鳴る”という行動に使うことを
 何度も繰り返す(=練習する)うちに、
 怒鳴ることの達人になってしまっているのです。

「怒りを感じたら、怒鳴る」という行動を習慣づけることを
 知らず知らずのうちに練習してしまっているんですね。

 同じように、感情の「正しい活用方法」は、
「意識」と「繰り返し」で身につけていくことができます。

 次の3ステップを意識しながら、
 感情を味方につける訓練をしてみてください。

 <感情を味方につける3ステップ>
  1.“感情”が生じていることを自覚する
  2.“感情”のエネルギーを“何に”使っているかを自覚する
  3.正しい方向にエネルギーを使う

 最初の段階では「ネガティブな感情」を
 自覚できていない場合も多いです。

「封じ込めよう」とするうちに、
「見ないふり」をすることに慣れてしまったのですね。

 だから、始めの段階では、
「感情が生じている」ということを
 自分で認識できるように意識をしてください。

 次の段階では、「生じた感情を何に使っているか」に
 自分の意識を向けていきます。

 例えば“不安”が生じたときに、
 自分はその感情を“何に”向けているのかを
 自己観察してみるのです。

「ただ、悩むだけ」なのか、
 それとも「解消するための行動をしている」のか。

 そうやって、自分が
「感情のエネルギーを何に使っているか」を
 把握していきます。

 そして最後の段階では、
「感情のエネルギーを自分の望むものに使う」ことを試してみます。

 感情が生じたことを認識したら、
 そのエネルギーを“意識的に”使ってみるのです。

 最初は上手くできないのですが、
 繰り返しているうちに、使い方が上達していきます。

***

 感情は厄介なもので、
 今回ご紹介したような方法を身につけても、
 完全にコントロールすることは、やはりできません。

 それでも、マイナスに傾く心の状態を
 リカバリーするのが早くなったり、

 感情のエネルギーを効果的に使うことは、
 できるようになっていきます。

 感情を味方につけ、自分が持っている全エネルギーを
 フル活用して日々を過ごしていけるように、
 3ステップを意識しながら“練習”を繰り返してみてください。

 黄塚 森

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。
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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに