経営コラム

創業450年以上、成長し続ける組織が実践している1つのコト

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われわれは、われわれの歴史の中に
われわれの未来の秘密がよこたわっているということを
本質的に知る。
                    ─ 岡倉天心

 

 経営哲学しかり、商法しかり、

 歴史を積み上げて来たものには、
 やはり「長く続くだけの」理由があります。

 僕は先日そんな、歴史を刻み続ける企業に出会いました。
 その企業はなんと、創業450年。

 そんな、気の遠くなるような長い間、
 生き残り、成長し続けている会社です。

 現代は創業後の「10年後生存率」が、
  「わずか10%」と言われる時代です。

 そんな中にあって、いったいなぜ、
 生き残り続けることができるのでしょうか。

 同じように、歴史を重ねる企業を調べていくと、
 そこには共通する「キーワード」が見えてきました。

 それは「残すもの・変えるもの」。

 今回は、数百年の歴史を重ねてなお、
 成長を続ける企業から、その長寿の秘密を探っていきます。

 物語は5月、京都を訪れたところから始まります。

 

「いつもと違うこと」をすると、新しい出会いがある

 

 京都を訪れると、いつも僕の足は
 南禅寺(なんぜんじ)という禅寺に向かってしまいます。

 お寺の枯山水(かれさんすい)の前で、本を読むのが、
 僕のお気に入りの時間の過ごし方。

 その日は天気も良く、それでいて涼しく、
 とっても気持ちの良い天気!

 いつもは電車で向かうのですが、
 そのときは思い立って、歩いて行ってみることにしました。

 地図を頼りに、お寺に向かって歩いていく途中、
 目の前に現れたのは、何やら活気に溢れた商店街。

 道の両側には魚屋さんや惣菜屋さん、
 八百屋さんに漬物屋さんなどが並び、

 お店の方々の元気な声が飛び交っています。

 エネルギーに満ち溢れた商店街をしばらく進んでいくと、
 ふと、あるお店の看板が目に留まりました。

 

創業450年のお店には「海外」がいっぱい?

 

 そのお店の名前は「有次」(ありつぐ)。

 創業はなんと、桶狭間(おけはざま)の合戦と同じ1560年。
 刀鍛冶として生業(なりわい)を始め、今ではその技術をつかって、
 和包丁の販売をしています。

 お店には各種包丁が3段の棚に所狭しと並び、壮観な眺め。
 包丁の種類は、実に400種類に及ぶそうです。

 その、伝統と技術もさることながら、
 僕が最も驚かされたのは「お客さんの種類」。

 僕がお店を訪れたとき、店内には10名ほどの
 お客さんが居ました。

 その中で、真剣に購入を検討しているのは3名。
 それは全員「海外の方」でした。

 お客さんが話すのは英語やフランス語。

 有次の店員さんは、そんな海外の方に対して、
 当たり前のように英語やフランス語で商品の説明をしています。

 実は、店舗が日本にしか無いにも関わらず、
 有次のお客さんの20%は、海外の方が占めるそう。

 国内外を問わず、京都を訪れた料理人が店舗を訪れることを楽しみにするほど
 ARITSUGUの名前は、今や世界ブランドとなっています。

 伝統に関わる企業には、
 日本市場に留まり、市場の縮小に苦しむ企業が多いように思います。

 そんな中で、有次はなぜ「世界から」顧客を獲得できているのか。
 その理由の一端を、18代目の店主の言葉に見ることができます。

 

「今」を見つめ、何が求められているかを知る

 

 有次18代目 店主:寺久保 進一朗 氏は、こう言います。

  『時代を見極めなければいけません。
    「昔は売れた」ではなく、今、何が求められているのか…。

   古いものがいいとか、新しいものがいいとか、
   そういうことではないのです。』

 かつての栄光に固執せず、常に「今」を見つめる。

  「品質を高め続けること」は変えることなく「残し」、
 どこまでも追求していきます。

 一方で「今」はグローバルに市場が開かれた時代。

 料理人は世界中に居るので、
 包丁を必要としている人は、世界中に居ます。

 そうなれば、これまで提供していた「顧客」へのこだわりは「変え」、
  「海外の方にも気持ち良く買っていただくためには
   どうしたら良いのだろうか?」を考える。

 そうやって「今」と「お客さん」をしっかりと見つめ、
  「残すもの・変えるもの」を見極めているからこそ、
 有次は海外のお客さんをも呼び込み、変わり続けているのでしょう。

 一方、「変わる」企業があれば、「変われない」企業もあります。
 例えば、アメリカの鉄道会社がそうでした。

 

鉄道会社は、なぜ衰退したのか

 

 かつて、アメリカの鉄道会社は「永遠の繁栄事業」と言われていました。
 誰一人として、その永続を疑う人は居なかったといいます。

 でも、それがやがて衰退してしまった。

 その原因のひとつが鉄道会社の
 自社に対する認識(定義づけ)だと言われています。

 同社は自分たちのことを
  「鉄道の会社である」と定義していました。

  「人やモノを運ぶ」ことではなく、
  「“鉄道を使って”人を運ぶ」ことを、
 事業として定義していたのです。

 だから「バス」という交通手段が普及しても、
  「自分たちには関係ない」と思ってしまいました。

 このときもし「自分たちは運輸の会社だ」と定義していたら、
 空や海、トラックの輸送など様々な展開が出来たはず。

  「鉄道」に固執したために、衰退してしまったのです。

 価値は「絶対的」なものではなく、
 取り巻く環境や、使用する人によって「相対的」に決まります。

 そのため、企業は常に市場を見つめ、
 変わり続けなければなりません。

 ただし「ただ変わればよい」訳ではないのが難しいところ。
  「残すもの・変えるもの」を見極める必要があるのです。

 それでは、何を残し、何を変えるべきなのでしょうか?

 その基準を見極めるには、
 老舗 和菓子屋の「とらや」の言葉がヒントになるかもしれません。

 

「とらや」はなぜ、「変わった」のか

 

 羊羹(ようかん)で有名な「とらや」。
 今も昔も、知らない人はいない、有名店として営業を続けています。

 このお店の創業も1500年代です。

 そんな伝統ある「とらや」が
 数年前から取り組んでいるのが「カフェ事業」。

 六本木や表参道に出店し、
 和の素材を使用した洋風スイーツを提供しています。
  (フォンダンショコラなどがメニューに載っています)

 それでは“昔ながら”の「和菓子」を捨ててしまったのか?というと
 そんなことはありません。

  「とらや」がインタビューで語っている言葉が
 この辺りの考え方を、とても良く表しています。

  『和菓子の歴史を振り返ると、大陸から羊羹(ようかん)やまんじゅう、
   唐菓子などが伝わり、安土桃山時代には南蛮菓子がやってきた。

   やがて日本は鎖国に入り、日本独自の文化が大成する中で
   日本人の暮らしにあった和菓子が定着したんです。

   つまり現代の和菓子は、海外の菓子を基にして、
   日本人が独自に発展させたもの。

   その時々で手に入る素材を使って、その時々で
   日本人が「おいしい!」と思うものを作ってきたのであり、
   それが和菓子の本来の姿なのです。』

 もちろん、今まで積み上げてきたものも、大切なものです。
 でも、それは「強みのひとつ」であり、全体の「半分」でしかない。

 もう半分は「今あるもの」をつかって、
  「今のお客さんがおいしいと思うもの」をつくること。

 これが「とらや」の「残すもの・変えるもの」。

 だから、カフェの展開や、
 和洋折衷のスイーツをつくっているのです。

  「とらや」の在り方を見ていると
 僕には「人間の歩く姿」が思い浮かびます。

 人間が歩くためには必ず、地面に接する足が必要です。
 片足が地面を踏みしめるからこそ、
 もう片方の足で、一歩が踏み出せる。

 両足を一変に動かそうとしては
 たちまちにバランスを崩してしまいます。

 企業も同じ。
 踏みしめる足を決めて、一歩を踏み出す。

 そうやって、止まることなく
 進み続けることが、企業の存続には必要なのだと思います。

 

100年先も、歩み続けるために

 

 現代は、市場の移り変わりが早く、
 一つのビジネスの寿命がどんどんと短くなってきています。

 だからこそ「何を残し、何を変えていくか」を
 定期的に振り返る必要があります。

 振り返るタイミングは、
 昔ならば10年ごとで良かったのかもしれません。

 しかし現代では1年ごと、長くとも3年ごとに
 自社を振り返る必要があります。

  □ 自分たちの事業領域はどこにあるのか
  □ 何のために事業をやっているのか
  □ 強みは何か
  □ 顧客が求めるものを提供できているか
  etc…

 そうやって会社と向き合い、自社の現状を知る。
 そして「残すもの・変えるもの」を決めて、
 少しづつ会社を変えていく。

 そうやって、一歩一歩、足を踏み出していくことが、
 倒れずに進み続けるための、たった一つの方法なのでしょう。

~

 有次の18代目店主の言葉に、とても印象的なものがあります。

  『継承は螺旋(らせん)です。一代一代ぐるぐると積み重ねられ、
   一ミリでも上にのぼっていかないと、
   反対に落ちていく一方になってしまう。

   次の代に繋ぐために、大事なものはいくつも在って、
   私はそれを「良い菌」のようなものだと考えています。

   店や職場に良い菌が充満していると、
   自然と人や環境が育まれます。

   その良い菌を増やし、守るように努めておけば、
   お店は長く続くんです。』

 自然界にあるものは全て、行く末が「2つ」に限られています。
 それは「腐る」か「発酵する」か。

 麹菌(こうじきん)やイースト菌などの菌を活用し
  「発酵する」ことがなければ、「腐って」土に帰るのです。

 菌を活用するために、私たちができることは
  「良い菌」を見極めることと、
  「その菌が育ちやすい環境」をつくることだけです。

 菌は生き物なので、環境の変化に敏感に反応します。
 環境が整っていなければ「良い菌」が居たとしても、
 増えることはありません。

 会社における文化、慣習、思考、教育、行動も同じです。
 環境を整え、注意深く見守らなければ、
 組織に深く浸透していくことはありません。

  『良い菌を増やし、守るように努めておけば、
   お店は長く続くんです。』

 450年の歴史に裏付けされた言葉は、
 人も会社も、自然の一部だということを
 思い出させてくれます。

 黄塚 森

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに

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