経営コラム

社長や上司の言葉は、なぜ部下に「伝わらない」のか?

 

 しゃべったことより、しゃべらずにいたことのほうが力がある。

         ー ジャーミー(15世紀のイスラムの作家)

***

 先日、経営者とお話しているときに、こんな話題が出てきました。

  「どうにも、社員に伝わらないんだよねぇ。」

 この話題は経営者のみならず、マネジメント職の方と
 お話しているときにも良く聞きます。

  「自分の想いが、部下に伝わらない」
  「指示の通りに、部下が動いてくれない」

 いつの時代も人々を悩ませてきた問題です。

 一方で世の中には、伝えることが得意で
 想いや意図を、上手に伝えていく人も存在します。

 この2種類の人間を分けるものは、いったい何なのでしょうか?

 様々な説がありますが、
 僕が一番しっくり来ているのは、次の言葉です。

  「伝わらない人は、喋りすぎている。」

 実は、上手に伝える人ほど「喋らない」というのです。

  「伝えなきゃいけないのに、喋らない?」
  「喋らないのに、何で伝わるの?」

 今回はそんな「伝わる」ことのカラクリを、
 お伝えしたいと思います。

 それでは、まずは「伝わる」とは
 どういうことかを考えていきましょう。

 

「伝わる」とは、どういうことか?

 

 ビジネスにおけるコミュニケーションにおいて
  「伝える」というとき、そこには必ず「行動」が伴います。

 つまり、「何かして欲しい」から、相手に「伝える」。

 仕事の指示を出すときでも、会社の理念を伝えるときでも、
 なぜ「伝える」のかと言えば、何か「行動」をして欲しいからです。

 だから「伝わる」ということは、
  「行動が起こる」ことだと僕は考えています。

 そして、ここで重要なのは
  「行動するのは、自分ではなく相手だ」ということ。

  「行動を起こす」のは、いつでも「相手」であって、
 自分ではないのです。

 だから「伝える」ということを考えるときには、
 どうしても「相手」のことを考えなければなりません。

 それも、ただ漠然と「相手」のことを考えるのでは意味がありません。

 では、何について考えるべきなのでしょうか?
 実は私たちが考えるべきなのは、「地図」についてなのです。

 あなたの地図。私の地図。

 

 人はそれぞれに、違う考えを持ち、違う経験をし、
 違う仲間に囲まれて人生を過ごしています。

 だから、たとえ同じものを見ても、
 何を感じ、何を考えるかは人によって違うのです。

 同じように、たとえ同じ行動をするにしても、
 何を目的として、何を得るためにするのかは人それぞれ。

 人は皆「自分の世界」を持ち、そこに生きているのです。

 その様子をうまく表した言葉に
 アメリカの作家であるクリスティーナ・ボールドウィンが
 残したものがあります。

***

  「どんなふうに記憶し、何を記憶し、なぜ記憶しているかによって、
   各個人の“心の地図”が作られる。」

***

 そういった「心の地図」に従って、
 人は皆、考え、行動をしているのです。

 だから「伝える」ということを考えるときには、
 相手の「心の地図」を考える必要があります。

 自分が「正しいと思うこと」ではなく、
 相手が何を信じ、何を求め、何に従って行動するのかを考える。

 それをきちんと把握して相手を導くことが、
  「行動」を起こしてもらうための、一番の近道となります。

 それにも関わらず、多くの人は
  「自分の地図」だけを見ながら、相手を導こうとしてしまいます。

 それでは、相手に伝わるはずがありません。
 相手が思った通りに行動してくれるはずがありません。

 なぜ、自分の地図を見ていては相手を導けないのでしょうか?
 その理由がよくわかる、こんなたとえ話があります。

***

  ある日、かかってきた電話に出ると、懐かしい友人からでした。
  その友人が、こう言います。

   「もしもし。交差点のところの“あのカフェ”に行きたいんだけど、
    道がわからなくて…。
    どうやって行ったら良いか、教えてもらえる?」

  あなたは、友人の頼みを快く聞き入れ、
  東京の地図を開いて道案内を始めます。

  しかし、いつまで経っても目的のカフェには着きません。

  それもそのはず。
  友人はパリを旅行中だったのです。

***

 この短い話から私たちが学べることは3つあります。

  1.私とあなたでは、見ているものが違う
  2.行動をするのは、私ではない
  3.喋れば喋るほど、目的地に着かない

 それぞれを、詳しく見ていきましょう。

 

1.私とあなたは、見ているものが違う 

 先ほどの話で、電話をかけてきた友人は
  「あのカフェ」という曖昧な表現で話を始めました。

 自分がパリに居て、旅行中であることは、
 相手には一言も伝えていません。

 でも、自分の中では「それが当たり前」だと思っているので、
 相手に伝えることをしなかったのです。

  「自分の見ているものを、相手も見ているはずだ。」

 この思い込みが「伝わらない」という悲劇を生み出します。

 自分が「見ていること」「感じていること」「思っていること」は、
 相手からは見えないのです。

 どんなに親しい関係になろうと、
 言葉で伝えた以上のことが、相手に伝わることはありません。

 だから、自分の「頭の中」を相手に伝えるときには、
 どんなに丁寧に伝えても、丁寧すぎるということはないのです。

 説明が分かりやすすぎて、怒る人は居ません。

  「自分の頭の中は相手には見えない」ということを理解して、
 でき得る限り詳細に、相手に伝えるようにしましょう。

 2.行動をするのは、私ではない

 

 友人をカフェに導くとき、
 実際に足を動かして「行動」するのは、あくまで「相手」です。

 そのとき、東京の地図を見ながら、
 パリの友人を導いても、目的地に着けるわけがありません。

 当たり前の話に聞こえるかもしれませんが
  「伝える」という場面では、頻繁にこの問題が起こります。

 自分の「心の地図」こそが正しい!と思って、
 伝えることをしてしまうのです。

 例えば「報酬」を求めて働いている上司が居るとします。

 その上司は「報酬」が一番のモチベーションなので、
  「当然、部下も同じように考えている」と思い込んでいる。

 そんな上司は、部下にこんな言葉をかけることになります。

  「これをやり遂げたら、ボーナスが入るぞ!
  だから、これをやり切ろうな!」

 でも実は、部下は「仲間への貢献感」が一番のモチベーション。
 上司の言葉は心に響かず、思うように行動が起こりません。

 こういった「地図の読み違い」は頻繁に起こります。

 あくまで行動をするのは「相手」です。

  「自分の地図」ではなく、「相手の地図」に従って、
 伝え、導くことを心がけましょう。

 

3.喋れば喋るほど、目的地に着かない

 

 電話で友人を道案内する場合、
 あなたは、どのように「伝える」でしょうか。

 おそらく、一方的に喋るということは無いと思います。

  「何が見える?」
  「この建物は近くにある?」
  「そこを進むと十字路に突き当たると思うんだ。」

 など、様々な言葉をかけて、
 相手の反応を見ながら導いていくのではないでしょうか。

 実は「伝える」という作業は
 電話で道案内することに非常に似ています。

 なぜなら「行動をするのは、あくまで相手」であり、
  「相手が居る状況を見ることができない」からです。

 そして、道案内をするよりもさらに難しいのが、
  「相手の地図を見ることが出来ない」ということです。

  「心の地図」は、実際に目で見ることが出来ないため、
 最大限に想像力を働かせて、言葉をかけていく必要があります。

 そして、このときに一番良くないのが「一方的に喋る」ということ。

 道案内をするときに、一方的に自分が
 喋り続ける場合を想像してみてください。

 相手がどこに居るのかもわからずに、
 一方的に喋ってしまっては、相手にとって、
 今するべき「行動」を伝えることができません。

 道案内をするのであれば、

   「どこに居るのか」
   「どんなものを持っているのか(お金・道具)」
   「何ができるのか(語学・運転免許)」

 など、相手の状況をまず確認し、
 すぐにできる「行動」を伝えるはずです。

 そうやって伝えるから、相手が「自分の足で」動くことができる。
 つまり「行動」が起こるのです。

 そして行動を起こした相手は、状況が変わるため、
 その変化を電話越しに伝えて来ます。

 報告を受けたあなたはまた、次の行動を伝える。
 そうやって繰り返すうちに、相手は目的地に着くのです。

 大切なのは、一方的に喋るのではなく、
  「双方向」のコミュニケーションを取ること。

 より細かい単位で「伝え」、
 伝える→行動が起こる→フィードバック→伝える…
 というサイクルを回していくこと。

 これが「伝える」ための一番の近道なのではないかと思います。

***

  「伝わる」ということを「行動が起こること」と定義すれば、
  「伝える」ことは、道案内のようなものです。

 相手に自ら「行動」を起こしてもらうために、
 心の地図を想像し、言葉を伝えるようにしましょう。

 そして、喋る量を減らしていくことが大切です。

  「伝わらないなぁ」と思ったら、
 自分と相手が喋る「割合」を確認してみてください。

  「伝わる」人は、自分と相手が喋る割合が
 50%:50%くらいになっています。

  「一方的」ではなく、
  「双方向」のコミュニケーションなのです。

  「伝わらない」人は、自分の喋る割合が多く、
 相手は相槌しか打っていなかったり、
 俯いて頷いているだけという場合が多いように感じます。

 まずは、自分が喋る量を減らしましょう。

 そして、その代わりに「頻度」を上げる。

 伝えて、行動を見て、修正して、また伝えるという
 サイクルを回すことを、ぜひ考えてみてください

黄塚 森

※この記事は、「Entre Magazine」のバックナンバーから抜粋しています。Entere Magazineの登録はこちらからどうぞ。

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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに

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