経営者インタビュー

リーダー育成のプロ 池田貴将に聞く「秀逸な組織」をつくるため経営者ができること

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社内からリーダーを育成し、”秀逸な組織”を作る

「組織」についての、経営者の悩みは尽きない。

大手企業に比べどうしても資本力やネームバリューで劣ってしまう中小企業では、優秀な人材を仲間に迎えることは至難と言える。仮に、優秀な人材を自社に引き込むことができたとしても、うまくフィットせずに本人の良さが活きないことや、せっかく力を発揮してくれたと思っても、定着せずに他社へと流れてしまう。こういったケースに遭遇したことがある経営者は多いはずだ。

今回は、「”秀逸な組織”をつくるために、経営者ができること」と題し、社内からリーダーを育成し、強固な組織を作っていくためのポイントを、「覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰」などで有名な作家、リーダー育成のプロの池田貴将氏に伺った。

お話を伺った方

池田 貴将 氏
株式会社オープンプラットフォーム 代表取締役
リーダーシップ・行動心理学 研究者

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早稲田大学在学中よりベンチャービジネスの新規事業立ち上げなどに関わり、ビジネスの中での「心理学」の重要性を感じる。成果をもたらす心理学の中で、世界的に有名なアンソニー・ロビンズのトレーニングを受けに渡米。アンソニー・ロビンズの主要トレーニングを修了。

大学卒業後、株式会社オープンプラットフォームを設立。起業家・経営者・ビジネスリーダー向けのスクールを主宰。ビジネスの成果を上げる「感情と行動をつくる心理学」と、東洋の「人間力を高める学問」を統合した独自のメソッドが注目を浴び、書籍や雑誌などに数多く取り上げられる。その誠実に学び続ける姿勢と、膨大に蓄積した知識を活かした講座は「専門家」も多く参加するセミナーとして全国で広く知られている。世界で活躍するビジネスリーダーを輩出することをミッションに、全国で活動している。

著書『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』『動きたくて眠れなくなる。』(サンクチュアリ出版)『未来記憶』『心配するな。』(サンマーク出版)、『がんばらないほうが成功できる』(PHP出版)累計で35万部を突破。

目次

  1. リーダー育成のために経営者がすべきこと
  2. 優秀な指導者になるための5つのステップ
  3. リーダー育成を“仕組み化”する
  4. 「辞めてほしくないリーダー」に定着してもらうには

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リーダー育成のために経営者がすべきこと

–「組織づくり」で多くの経営者が悩む中、「秀逸な組織」をつくるためにはリーダーが不可欠です。社内からリーダーを育成していくために経営者がまず取り組むべきことはなんでしょうか?

池田氏(以下、池田) – どういう人材を育成したいか会社のトップがはっきりと定義しない限り、社内からリーダーが生まれることは難しいでしょうね。ただ「成長しろ!」と言っても、どこをどう伸ばせばいいのか分からなければ、人は伸びないからです。極端な例を挙げれば、リクルートが育てたい人材と製薬会社が育てたい人材は異なりますよね。組織のビジョンに沿って、どういう人材を育成するのかを定義するのが、経営者が最初にしなければならない仕事だと考えています。

–組織によってリーダーの定義も異なるのですね。リーダー育成に共通する方法というのはあるのでしょうか。

池田 – リーダーになるためには、3つのステージを通らなければならないと考えています。

まずは一つ目。信頼と尊敬に値する人物になることです。これがリーダーの前提です。信頼と尊敬を得るために、まずは自分の人生を自分でリードしていなければなりません。「リーダーとはなにか?」「ひとをリードする(導く)とはなにか?」について徹底的に考えることが重要です。価値観や信念を明確にしましょう。人のリーダーになるまえに、自分の人生のリーダーであれということです。

次に二つ目。相手を思いやり、理解できることです。ほとんどの場合、人を理解できる人ではなく、成果を出した人が上司になります。成果とは、人を理解するというより、自分の世界を追求した結果なので、成果を出せる人が良いリーダーであるとは限りません。

ちなみに、相手を理解するほど、部下に対する影響力は増えます。例えば、部下に自分の経験を話しているとき、相手がなぜそういう言動をしているのかを理解しないまま、自分の考えを押し付けていると、「あなたの時と私の時では状況が全然違うから参考にならない」と思われてしまいがちです。まずは「Me,too(同意のポイント)」を見つけましょう。上司が「わたしもそうだよ」と理解することが先なのです。すると、「私もそうです!」とまるで自分事のように部下に臨場感をもってもらうことができるようになります。相手を理解しようとすれば、深い信頼関係を築くことができ、多くの共感を得ることができるのです。

最後は、成果を出すことです。人材育成は投資と一緒で、労力をかけても、絶対に伸びる保証はありません。だから、成果が出ておらず、余裕のない状況で人材育成にばかりに力を注ぐのは本末転倒です。成果が出ていて、その余力で人を育てると、育てる余裕があるから人材も育ちやすい。だから、リーダーは成果を出し続けなければなりません。

−リーダーを育成するためには早く成果を出すことが重要、と。

池田 – そうですね。人材育成は中長期的な余裕がないとできません。また、短期の結果に繋がることでもありません。経営者も、社員にマニュアルを覚えさせるだけであれば悩みません。社員を伸ばしていきたいと思うから悩むのです。

人材育成は、長期的な視野が必要です。なので、短期間で結果を出したいなら、人材育成ではなく別の方法を取るべきだと考えています。個人的には、経営者自身がそれまで以上の結果にコミットし成果をあげることが短期的な結果を出すためには最速だと思っています。

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優秀な指導者になるための5つのステップ

–池田氏が、リーダーを育成する時に伝えているポイントを教えてください。

池田 – 人材育成はクリエイティブな領域です。そして、クリエイティブなことができるようになるには①知識を学ぶ②理解する③応用できる④分析できる⑤評価できるという5つのステップで習得していく必要があります。

まず、人材育成についての知識が必要です。これでほとんどすべて決まります。人を育成しようと思ったら、人材育成するための知識を学ぶべきです。最低でも書籍を3冊は読みます。知識を学んだら、それを自分の言葉で噛み砕いて理解し、さらにそれを現場に置き換える応用力が必要になります。

自分の経験を部下に伝えるだけでは不十分なのですね。

池田 – 実は、ほとんどのリーダーは自分の経験の中で教えようとしますが、それはあくまでたとえ話でしかありません。その人の話をどれだけされても、限界があります。

知識、理解、応用する力が身についたら、次は分析力が重要です。人材育成にも、その人にあったやり方が存在します。手取り足取り教えるのか、コーチングのように質問しながら育てるのか、ティーチャーのように教えたほうがいいのか、メンターのように大きな方向性を示したほうがいいのか、それとも背中だけ見せればいいのか。いろいろな方法がある中で、その人に合った指導方法を分析する力が必要になります。

そして最後に評価力です。人の強みと弱みをしっかり評価できなければなりません。人は強みよりも弱みが目立つのですが、弱みばかり指摘する上司の下につくと部下の強みが伸びにくくなります。これは非常にもったいない。

–人材育成はクリエイティブな仕事、という発想を経営者はなかなか持てないのでは。

池田 – そうですね。この5つのステップをじっくりなぞっていき、習得すれば、人を育成できるリーダーになれると思います。多くの方を見てきて、後半の「分析」と「評価」のみされる上司の方を多く見てきました。しかし、その前提となる知識が大幅に不足しているのに分析や評価のみをされてしまう部下は成長が大きく制限されることに繋がります。まずは、リーダー自身が人を育てることについてとことん学びましょう。

–育てるのが苦手な経営者の方はどうすればいいのでしょうか。

池田 – 育てるのが向いている人と向いていない人の違いは、自分自身に興味があるか、それとも自分より人に興味があるか、の違いだと考えています。育てるのが向いている人は、相手の視点で考えられる人です。一方、向いていない人は、自分の視点で「早くできるようになれ」と言ってしまいがちです。相手の視点から指導することが、良い指導のポイントです。

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リーダー育成を“仕組み化”する

–社内からリーダーを生むためには、「採用」と「社内から育成」の2つがあると思いますが、手を加えるとしたら池田氏のオススメは?

池田 – その人や会社に合った育て方のモデルを適用することが大事だと思います。人材の育て方にはWillとSkillの分類という学術的なモデルがあります。このモデルによると、人材はWill(やる気)とSkill(スキル)に応じて以下の4つに分類されます。

①やる気がなくてスキルが低い

②やる気がなくてスキルが高い

③やる気があってスキルが低い

④やる気があってスキルが高い

①~③の人材を④のやる気もスキルも高い人材にするためには、それぞれ異なるアプローチが必要です。

余裕のある大企業では採用と育成にコストをかけられるので、③「やる気があってスキルのない人」を採用し、トレーニングすることでリーダーを育成できます。

ただ、採用や育成にコストをかけられない中小企業では、①「やる気がなくてスキルもない人」を採用し、じっくり手取り足取り教える必要があります。しかし、色々なことができるようになっているのに、いつも上司が側で見てくれている、いわば補助輪付きで走っている状況なので、上司がいないと何もできない人材になってしまう危険性があります。なので、まずは手取り足取り教える方式を取り、どこかの段階で本人に問いかけながら本人にやらせてみるコーチング式の指導方法へスライドさせていく必要があります。

–リーダーを生むためのプロセスは仕組み化できるのでしょうか?

池田 – 誰の下につけるか?が意外と重要なテーマです。リーダーに育成したい人材は、会社の中で最も能力が高い人の側に置けば一番伸びます。ただ中小企業の場合、最も能力の高い人には活動してほしいと思ってしまうため、新しい人材を能力の高くない人の下につけてしまうことがあります。それだと人は伸びません。育成したい人材をどの上司につけるかというのを、しっかりと見定めることが重要です。

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「辞めてほしくないリーダー」に定着してもらうには

–優秀な人材であれば、ステップアップしたり、独立することがあります。「辞めてほしくないリーダー」に定着してもらうために、経営者ができることは何でしょうか?

池田 – 定着には、「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の両輪が必要です。内発的動機付けは、その人が興味のあることと会社の方針を擦り合わせることです。人間には、「ここを超えると楽しいと感じる」という感情の閾値(いきち)があるのですが、楽しさとつまらなさの閾値は違っていて、楽しさを感じる閾値はつまらないと感じる閾値より高いところに設定されています。つまり、仕事の楽しさ、というのは仕事のつまらなさよりも感じにくくできているのです。本当は楽しんでいるのに、楽しさを感じる閾値が高いため、仕事の楽しさを自覚できないのです。興味があるから始めたのに、始めてみたらつまらない、と思ってしまいがちですが、その時はその人が興味を持っていたことを思い出させてあげる必要があります。

人間の感情の「閾値」をリーダーは把握することも必要なのですね。では、外発的動機付けとは?

池田 – 外発的動機づけとは、部下にとって刺激的な環境を常に整えるということです。特に、能力が伸びた社員が辞めてしまう組織では、部下が上司よりも成長してしまい、上司と部下との関係や距離が変化してしまっていることがあります。上司や経営者は、人材育成について考える前に、自分がどれくらいのスピードで成長しているのかを確認してください。本人が成長していないのに、人を育てたいというのは根本的に無理です。部下に一周差つけるくらいが、上司にとっては丁度良いと思います。

ただ、内発的・外発的動機付けが機能する前提は、上司と部下との信頼関係です。信頼関係がないと、上司が成長していても、部下に勝手にやらせておこうと思われてしまいます。上司と部下が一緒に成長していけるような信頼関係を築くことが不可欠です。

最後に、組織作りに悩む経営者の方にメッセージをお願いします。

池田 – 組織をどうつくるか、人材をどう育てるか、これは世界中の経営者が同じ悩みを持っていることです。つまり、あなたが悩んでいることは、世界の誰かがすでに通過した悩みであることも多いです。「導くひと(Leader)とは学習するひと(Reader)」と海外のリーダーシップトレーニングで教えられました。歩みを止めず、目指す未来にむかって学びつづけていきましょう。

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