見える化

「見える化」の事例―企業の明暗を分ける

 

mieruka 3今回は「見える化への取り組み」が中小企業にとってどれほど大きなものなのか「倒産」の事例を用いて解説します。

「知らない」「気づかない」の恐ろしさ

多くの経営者は「商品が売れないから会社は倒産する」と考えています。しかし商品を売ることに成功しても、倒産してしまう企業は多くあります。それは「黒字倒産」です。黒字倒産は「売上は立っているのに、キャッシュが手元にない」ために倒産してしまうことを指します。

黒字倒産が起きてしまう大きな理由。それは、経営者がキャッシュの状態を「知らず」ピンチの前兆に「気づかなかった」から起こるのです。経営者はどうすれば、ピンチを事前に回避できるのでしょうか。

基本的な考えですが、

  1. 損益計算書(PL)
  2. 貸借対照表(BS)
  3. キャッシュフロー計算書(CF)

から構成される「財務三表」を経営者は常に意識すべきです。多くの経営者は費用や損失、利益を表す「損益計算書」を気にされる方は多いのですが、残り二つを気にされる方は意外と少ないと思います。この機会に改めて確認してみます。

貸借対照表とは、会社の財務状況を「資産(どのような状態でいくら持っているか)」「負債(いくら借りているか)」「資本(企業が集めたお金)」の観点から表す報告書のことです。

キャッシュフロー計算書とは、営業活動、投資活動、そして借り入れや増資などの財務活動の観点から、実際のキャッシュの流れを見るものです。

経営者はこれらを「作ることができる」必要はありませんが「把握する」必要はあります。「財務の見える化」を実践するプロセスで、会計の知識がなくても要点だけ抑えることができます。財務状況を把握することで、会社の危機の前触れに気づくことができます。

会社の財務部が経営危機の前兆に経営者より先に気づいているのに、経営者が財務状況を理解することができずに、危うい経営判断を繰り返し行い、ようやく危機を認識した時には「時すでに遅し」だったという恐ろしい事例は数多く存在します。

黒字倒産の原因は「資金繰りの失敗」です。上手く資金繰りをするためには、自社の財務状況を把握しなければなりません。見える化に取り組まず、会社の財務状況が不透明であった故に経営者が危機に気づくのが遅く、黒字倒産となってしまった事例、経営判断を誤った事例を紹介していきましょう。

事例1「アーバン・コーポレイション社」―損益計算書だけを重視した末路

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黒字倒産の典型的事例である、2008年に倒産した、不動産会社である、東証一部上場企業「アーバン・コーポレイション(以下 アーバン)」を紹介します。

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アーバンは2005年から2008年にかけて、売上高は570億から2430億まで順調に増加しています。経常利益も順調に増加していました。しかし収入と支出の差額を表す、営業キャッシュフローのマイナスは2005年に比べ、5倍の1000億と膨らんでいました。なぜなら棚卸資産、つまり在庫(アーバンの場合、売れ残りの不動産)が4300億円まで急増していたからです。損益計算書上では棚卸資産に発生している費用は原価として考慮されていないため、莫大な在庫維持費が掛かっているのにも関わらず、表面上は黒字となっていました。

キャッシュフロー計算書も考慮していれば、この黒字は表面的なものであることは、明らかですが、このような状況にもかかわらず、当時のアーバンの取締役9名の平均年収は7700万円(!)近くあり、従業員も増やし、社員の平均年収も右肩上がりでした。

資金繰りに行き詰ってきても、銀行借り入れなどその場しのぎの対応を続け、結果として負債を返済できる見込みが完全にないことが判明し、倒産しました。

経営陣がいつからこのような状況に気づいていたか、もしくは最後の最後まで危機感を持っていなかったのか定かではありませんが、経営陣が損益計算書を重視し会社の財務状況を適切に「見ていなかった」ために、棚卸資産の減少のための対応をせずに、雇用数を増やしたり給料をカットせず逆に上げるなどの経営判断を下し、倒産という結果になってしまいました。

事例2「ワイキューブ社」―財務状況の深刻さに気付いた時には、時すでに遅し

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見える化への取り組みは、財務状況の感覚的な把握を可能にするだけでなく、これから先の財務状況を予測すること容易にし、今後の経営判断の論理的根拠としてその予測を使えます。逆に、「こうしたらこうなる」という未来を知らないことで、誤った経営判断をしてしまう可能性もあります。

黒字倒産ではありませんが、一時期就職したい企業ランキングの上位にもランクインした、「ワイキューブ」の事例を紹介します。こちらの企業は社員のモチベーション向上、優秀な人材の確保のために、福利厚生の充実に力を入れていました。具体的には、「3年間で平均給与を1000万以上にする」「社内にバーを置く」「二年目以降、社員はグリーン車を使える」などです。問題は、それらの費用をすべて銀行からの借入金で賄っていたということです。その額は、40億円にもなり、ワイキューブの年間売上と変わらないものでした。この借金を行ったのは、働く環境を良くすれば、業績がよくなるという経営者の仮説によるものでした。結局その効果は表れなかったため、倒産という結果になりましたが、この経営判断に関してどうこうは言いません。

問題はその判断をする際、会社のキャッシュフローを軽視したことです。借入金を増やすとどのくらいの売上を必要とするのか。そのためにはどのような経費が掛かってきて、どれ程長い返済計画を立てるかなど、お金に関しては非常に慎重にならなければいけません。大胆な経営判断は時に、功を奏すかもしれませんが、その際には、会社の今の状態、これからどうなるかの予測を「見える化」によって把握していることを必ず守りましょう。

見える化は業務を効率化するだけではありません。企業が危機的状況を回避するための重要な取り組みでもあります。今すぐにでも、見える化に取り組み、経営指標を洗い出し、自社の状態を確認してみましょう。

→次の記事へ 4.「「見える化」5つの視点

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