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 国内市場が縮小し、海外の中間層・富裕層が増加する中、海外展開は中小企業にとって重要な戦略の一つかもしれない。中小企業庁調査室が今年4月に発表した2016年版中小企業白書によると「稼げる中小企業」は海外展開を通じて生産性向上や売上拡大を達成しているという。

 しかし、「海外進出してもうまくいくか分からない」「海外拠点をどうマネジメントすればいいのか分からない」といった疑問から、なかなか踏み出せない経営者も多いと思う。

 そこで今回は、会社設立から5年後に中国に子会社を設立、現在はグループ全体で7カ国13拠点のネットワークを築く先鋭ベンチャー企業、モンスター・ラボの鮄川宏樹社長に、「海外拠点を設立・運営していくための5つのポイント」についてお話を伺った。

お話を伺った方

人物紹介 : 鮄川宏樹(いながわ ひろき)氏 

鮄川さん登壇写真

株式会社モンスター・ラボ 代表取締役CEO

1999年プライスウォ—ターハウス(現IBM)に入社し、IT・経営コンサルティング業務に従事。2000年11月、テクノロジーによって社会を変えていくインターネットの世界に魅せられ、当時日本でオブジェクト指向技術の先駆けであったベンチャー企業株式会社イーシー・ワンに入社。2003年には会社内最年少マネージャーとしてJASDAQ上場を体験。

2006年豪州Bond UniversityのMBAプログラム受講を経て、これまでの集大成となるビジネスプランを事業化し、2月に株式会社モンスター・ラボ設立と同時に代表取締役就任。

会社ホームページ https://monstar-lab.com

1. 海外進出のきっかけは「優秀な拠点リーダー」

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― 会社設立から5年後には中国に完全子会社を設立し、現在世界中で海外展開されているモンスター・ラボですが、鮄川社長は初めから海外進出を考えて起業なさったのですか?

鮄川- そうですね。前職のベンチャー企業でも中国に子会社を作った経験があったので、開発チームを作る時に海外拠点を持つことは最初からイメージとしてありました。

 ただ、会社が小さいうちは効率が悪いので、ある程度の規模になってチャンスがあれば、海外に開発拠点を持とうと考えていました。

― 海外進出のきっかけは?

鮄川- 2008年頃に、現在中国支社の代表を勤めている社員が入社したのが大きかったです。開発拠点としての目的と、成長する中国市場に対してサービスを提供したいという目的から中国進出を考えていたので、それを念頭に置いて入社してもらいました。

 ですが、最初彼には日本のモンスター・ラボでエンジニアとして働いてもらいました。人は信頼関係が大事なので、2年ほど一緒に働いて、信頼関係が出来た段階で中国・成都に100%子会社を作りました。

2. 優秀な拠点リーダーを探すには?

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― 拠点リーダーとなる中国人社員の入社がきっかけだったのですね。拠点リーダーができる人材がいないと悩まれる経営者の方は多いと思うのですが、どのように優秀な拠点リーダーを見つければいいのでしょうか?

鮄川- 一番簡単なのはM&Aです。優秀なアントレプレナーを現地採用するのはなかなか難しいので、それならアントレプレナーがいる会社を買収して、その人をそのまま置いたほうがいいと思います。「タレントごと引き入れる」というのは、M&Aのよくある目的の一つです。

― M&Aを使わず、現地で一から拠点を作ろうとしている経営者の方もいると思うのですが、それだと拠点リーダーを見つけるのが難しいのですね。

鮄川- かなり大変だと思います。工場のように、日本が設計して日本流のやり方でやらせるのであれば日本人を置けばいいのでしょうが、その国のマーケットを取りに行きたい場合は、日本人よりも現地の人材のほうが適切です。

 しかし、日本で会社を任せられる優秀な人材を探せと言われても難しいのに、海外ではなおさらです。

― それでは、一から拠点を作る場合、どのように拠点リーダーを見つければいいのでしょうか。

鮄川- すでに経営経験があるような人をヘッドハンティングするかマネジメントチームを仲間に入れられれば、現地の即戦力をそのまま採用できます。即戦力を求めているならそちらの方法が良いと思います。

 または、素養がある若者を現地で採用して育てることです。最初は日本人がいて、その日本人が海外で優秀な若者を採用し、その人にバトンを渡すのは可能だと思います。

― お話を伺っていて、御社は拠点リーダーを現地採用することにに力を入れていると感じたのですが、何か理由はあるのでしょうか?

鮄川- 日本人よりもその国のリーダーの方がその国のことをよく知っていますし、それが将来的なメリットに繋がるため、弊社で拠点リーダーを採用するときは「現地の人材」にこだわっています。

 人件費が安いという理由でその国に進出しても、新興国のコストはどんどん上がっているので、どこかのタイミングでフラットになるはずです。するとその国でビジネスをする強みというのは、その国のマーケットを知っているとか、日本以上に優秀なエンジニアや技術を持っていることになります。

 弊社ではその時にその国に合った新しいマーケットやプロダクトを作ることを目指しているので、日本人よりもその国のリーダーを採用するようにしています。

3. M&Aで海外拠点を作るときのポイント

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― 優秀な拠点リーダー採用にはM&Aが良いと仰っていましたが、カルチャーが異なる会社のマネジメントなど、M&Aにも注意すべきポイントがあると思います。M&Aで海外拠点を作った場合、気をつけるべきポイントを教えてください。

鮄川- M&Aの目的にも依るのですが、例えばその会社の人材が欲しくて買収した場合、代表者の考え方が会社のカルチャーに合っているのかを買収前にすり合わせる必要があります。また、マネジメントチームに残ってほしかったのにチームがM&A後やる気がなくなっては本末転倒じゃないですか。そういうことも考えなければなりません。

― 買収前のすり合わせが重要なのですね。

鮄川- 売る方だって、日本の会社に資本を入れてもらうことで新しい日本向けのマーケットを開拓できるかもしれないとか、お金以外の目的を持っているかもしれません。こちらの期待値だけじゃなくて向こうからの期待値も聞いて、一つ一つすり合わせる必要があると思いますよ。

 結婚と同じですよ。結婚したことないですけど(笑) 後から「こんな話なかった」となっては、ダメになってしまいます。

 これは日本の会社とM&Aをするときも同じことですが、重要なことだと思います。

― 自社立ち上げかM&Aかどちらが向いているか、どのように見分ければいいのでしょうか。 

鮄川- それは海外進出する目的に依ります。海外進出を考えている経営者は、目的と目的を達成したいスピードを考え、どの手段を使えば達成できるか考える必要があります。例えば、海外のプロダクトが欲しいならそのプロダクトを作っている会社を買えばいいじゃないですか。その場合、同じようなプロダクトを作っても市場の中で絶対勝てるという確証がない限り、自社で立ち上げるという選択肢はありえません。

 目的意識を持って、どの手段が適切か考えるべきです。

4. 本社で海外戦略を後押しするのは「管理能力のある人材」

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― 海外拠点のマネジメントのために、日本の本社にはどのような人材が必要なのでしょうか。 

鮄川- 必要なのは、会計や数値管理ができる管理能力のある人です。グローバルな観点から会計ルールにのってレポーティングできる人材や部門が必要です。

 あとは、財務的な観点や法的な観点からリスクマネジメントができる人材や、分からない環境の中でチャレンジできたり、マーケットに入り込んでゼロイチを作れる人材が必要だと思います。

― グローバル人材、というと語学力に目が行きがちですが。

鮄川- いや、実は外国語能力はそこまで重要でないと経験から感じています。通訳がいればいいですし。

 ただ、必要な人材に関しても拠点の目的によって全然違うので、海外展開に必要な人材像については自社でよく考える必要がありますね。

― 若手・年配など、経験は関係ないのでしょうか。 

鮄川- 全く関係ないです。ただ、現地の会計士とコミュニケーションを取ってきちんとした会計事務所を斡旋したり、本社の品質管理など、選定や管理に関する具体的な指示を出せる能力が求められるので、そうした人材がCFOに多いとは思います。

5. 海外進出を成功させるために、経営者に必要なこと

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― 海外進出を成功させるために、経営者がやるべきこととはなんでしょうか。 

鮄川- まず、自分で現地に足を運ぶことだと思います。人や制度やカルチャーなど、海外は日本に比べて自分が体で感じられる情報量がとても少ないです。経営判断において重要なのは意外と、テキストで見る情報ではなくその肌で感じる情報であったりします。ですから経営者が自分で足を動かし、情報量をカバーする必要があります。

― 自分で感じた情報から、適切な経営判断をする素質が必要なのですね。

鮄川- そうですね。上手く行かなくなった時に潔く撤退する勇気を持つことも重要だと思います。ただ、失敗にはいつでも理由があります。前もってリサーチしておけば未然に防げた問題もあるかもしれません。経営者が肌感覚を持ったリサーチをする能力も、海外進出を成功させる上で重要なポイントです。

― 最後に、国籍も文化も異なる社員をマネジメントするために、鮄川社長が心がけていることを教えてください。

鮄川- 一つは会社がどこを目指しているのかを言えること。自社のカルチャーややり方を言語化して言えることだと思います。

 あとは、自分が持っていないものや違うバックグラウンドを尊重することです。外国人とコミュニケーションを取るとき、よく「違い」がフォーカスされてしまいがちですが、本当は変わらないということも多いんです。褒められたり感謝されたら嬉しいなど、何人でも変わらないこともあります。なので、違いにフォーカスするのではなく、一人の人間として誠実に接することがポイントだと思います。

まとめ 海外拠点を設立・運営するための5つのポイント

― 本日のお話から、海外進出を成功させるためのポイントは以下の5つに集約されると感じました。

【ポイント1】目的意識から海外進出の手段を考える

【ポイント2】優秀な拠点リーダーをM&Aで引き入れる

【ポイント3】M&Aでは買収前のすり合わせを徹底的に行う

【ポイント4】本社に管理能力のある人材を置く

【ポイント5】経営者自身が足を動かしてリサーチする

この中で、「これだけは外せない」最も重要なポイントがあれば教えてください。

鮄川- 全て重要なのでどれが一番とは言えないのですが、目的意識をクリアに持つことが全ての根幹ですよね。M&Aか自社立ち上げか、という拠点の作り方だけではなく、進出する国も、本社に必要な人材像も、リサーチの方法も、目的意識によって変わります。

 海外進出に限った話ではありません。【ポイント1】がしっかり出来ていないと経営は上手くいく訳がないと思いますよ。

 

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― 鮄川さん、ありがとうございました!

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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに