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 「忙しい」「やりたい仕事に集中したいが時間が取れない」と、生産性や時短に関する悩みを抱えている経営者の方は多いはず。しかし「仕組みを整えれば、経営者はもっと時間に余裕を持てるようになる」とトヨタ式でおなじみの原マサヒコ氏は語る。

 そんな原氏も、経営者として活躍するかたわら、執筆活動や講演活動、子育てにも勤しんでいる。原氏が、限られた時間で多くの仕事を成し遂げられるのは、トヨタで学んだ「無駄を徹底的に省く」ための考え方やノウハウが生きているからだ。

 あなたの会社の生産性を高めて経営者としてもっとラクになるためには何をすればいいのか。今回は「経営者がもっとラクになるための時短術」と題して「トヨタで学んだ自分を変えるすごい時短術」著者の原マサヒコ氏にお話を伺った。

お話を伺った方

人物紹介:原 マサヒコ
株式会社プラスドラブ代表取締役
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神奈川トヨタ自動車株式会社にメカニックとして入社し、トヨタ現場独自の改善手法やPDCAサイクルを叩き込まれる。これらを常に意識した結果、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝に輝く。その後IT企業を経て、WEBマーケティングのサービスを提供する株式会社プラスドライブを立ち上げる。現在も代表取締役として、クライアント先のWEBサイト改善やマーケティング施策の推進業務に従事する傍ら、トヨタで学んだビジネススキルを社会に還元するため、講演活動や執筆活動に取り組む。『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』(経済界)、『どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力』(ダイアモンド社)など、ベストセラー多数。

1.経営者は「トヨタ式カイゼンマインド」を持て!

toyota6高い生産性を上げ、成長し続けているトヨタ。なぜ、高い生産性をキープできているのでしょうか?

原氏(以下、原)- 「カイゼン」という考え方が社内に浸透しているからだと思います。カイゼンとは、極限まで無駄を省くという「トヨタ生産方式」のコアになる考え方です。上から指示されたことをただやるのではなく、従業員一人ひとりがアイディアを出し合い、仕事のやり方をより良いものにアップデートしていく、という風土があるから、成長し続けることができるのだと思います。

経営者は、そのカイゼンマインドをどのように経営に取り入れるべきでしょうか?

原- カイゼンマインドの一つ、「自働化」がキーだと思います。「自働化」とは、目の前にある仕事を効率よくするために知恵を絞りながら仕事をするということです。ルーティンワークのような創造性のない仕事は誰がやっても同じアウトプットになりますので、その仕事を自動で回すにはどうすればいいか、知恵を絞ることが経営者に求められると思います。自働化を実践することで、経営者は創造的な仕事に注力できるようになります。

 例えば、社内コミュニケーションやマネジメント、タスク管理やスケジュール管理など、紙ベースで行っていることがあれば、最新のITツールに置き換えて自動化することができます。常にアンテナを広げて、「もっと良いやり方はないか」と模索し自働化を図るというのは、経営者自らがやるべきことだと思います。

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2.最新ツールの導入でもっとラクになる

ホワイトカラーにとって、最新ツールを使うことが生産性をあげるポイントなのですね。

原- そうですね。最近はルーティンワークを自動化してくれるクラウド型ITツールが続々と登場しているので、それを使わないという手はないと思います。優秀な経営者は、ITツールに対する情報感度が高く、投資も惜しみません。どのツールを使えば問題解決できるか、また時間短縮ができるのか、ということをよく把握しています。他の会社より一歩先を行くためには、最新のITツールに関する情報を集め、それを社内で積極的に試すことが必要だと思います。

ツールの導入に失敗した経験がある経営者の方も多いように感じます。 

原- 失敗を恐れずに、トライアンドエラーを繰り返すことが重要です。いつか必ず正解に行き着きますから。過去にITツールの投資に失敗した結果、「最新ツールを導入しても上手くいかない」という固定観念を持ってしまう経営者の方も多いのですが、それでも恐れずにどんどん試していくというのが大切だと思います。

ツールを導入しても、社内で定着しないというケースも多く見られます。

原- せっかく導入したツールが社内で定着しない原因の多くは、社内でツールを導入する目的が共有されていないということです。多くの会社では、ツールを導入する際に社内で「やらされ感」が漂ってしまいますが、これはツールを導入する目的が共有されていないためです。ツールを導入する理由とツール導入のゴールを共有すると、社員一人ひとりがツールに向き合う姿勢も変わってきます。

 「何かをなし得るための三角形」という考え方があります。三角形の一番上が「ツールセット」、真ん中が「スキルセット」で、一番下が「マインドセット」です。

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 つまり、何かをなし得るための大前提は、ツールでもスキルでもなくマインドである、ということです。例えば、良いハサミ(ツール)と良いスキルを持っている美容師さんでも、目の前のお客さんを喜ばせようとか、日本一の美容師になりたいといった仕事に対するマインドがないと、良い美容師とは言えません。この三角形は、どんな職業にも当てはまります。

 そのツールをどう扱い、どこを目指すのかというマインドが整っていることが、ツールを導入する大前提です。マインドが整うと、モチベーションも上がるので、スキルは自動的に向上します。そのため、ツールを定着させるには、目的を意識させ、マインドを整えることが非常に重要だと考えています。

-トヨタでは、経営者の大切な仕事である「経営判断」にもITツールを使っていると聞きました。

原- 正しい経営判断のためには、情報が必要です。経営者が情報に素早くアクセスするために、トヨタではセールスフォースが導入されています。セールスフォースから出ている社内SNSのchatterも使われていて、経営指標などをスマホ上で確認できたり、社長からのメッセージを社員がスマホで確認できたりしています。ツールを使うことで、巨大な組織の中でも情報が一元化されているので、経営者はそれにアクセスし、瞬時に経営判断ができるような仕組みができています。

 例えば、ソフトバンクの孫正義社長も情報収集の仕組みに特に力を入れており、瞬時に情報を得られるようにしているため、経営判断をするのに10秒以上かけないそうです。社内用SNSやCRMなどのITツールを導入することで、経営判断に必要な情報の確認にかかる時間を大幅に短縮できると思います。

―社内の情報が一元化されることで、社内の問題の早期発見にも繋がりそうですね。

原- そうですね。トヨタで使われている社内用SNSの「chatter」が特に機能したのが、東日本大震災のときでした。東北にはトヨタの工場もありましたから、経営者としては被災地の情報がすぐに必要でした。そのとき、東北地方にいた社員たちがchatter上に状況を書きこんでいたので、経営幹部はそれをチェックし、正しい経営判断をすることができました。ですから、問題の可視化という意味でも、情報収集の環境整備に力を入れることは重要だと思います。

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3.問題解決も「三現主義」で時短!

経営者が時間を取られがちな「問題解決」ですが、問題解決も時短できるのでしょうか?

原- トヨタでは、問題を解決するために「三現主義(現地・現物・現実)」という考え方を大切にしています。「現地へ行って、現物を見て、現実を知る」という意味です。先ほどからITツールの重要性をお話ししていますが、問題解決のためには実際に自分の足を動かし、現実を自分の目で確かめ、問題の根本的な原因を探ることが、時短に繋がります。

 amazonの創業者ジェフ・ベゾスは、トヨタ式を意識している経営者の一人なのですが、amazonでも倉庫で何か問題が起きたとき、まずは現場になるべく行くようにしているそうです。机上で結論を導こうとせず、現場に足を運ぶことで、問題に対して適切な判断ができるため、時短で問題を解決することができるというわけです。

現場で問題の根本原因を探るにはどうすればいいのでしょうか?

原- 「なぜ?」を5回繰り返すことで、問題の根本原因を見つけることができます。現場で見た現実を元に、「なぜこの問題が起きたのか」という問いを5回ぶつけると、根本が見えてきます。

 例えば、「最近車が売れない」という問題に「なぜ」を5回ぶつけると、「営業が悪い」、「訪問数が少ない」、「一件あたりの時間が長い」、「無駄な会話が多い」「話すのが下手」という根本原因が見え、「ロールプレイング研修をしよう」という解決策が見えてきます。

 多くの会社ではその場しのぎの対応をしてしまいがちなのですが、それでは問題が再発します。「なぜ」を5回繰り返すことで問題を根本から解決し、再発を防止することで時短に繋がります。

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4.属人的な仕事をなくすため、経営者は「業務の標準化」と「横展」に取り組め!

仕事の属人性をゼロにするために、トヨタの具体的な取り組みとは?

原- 属人的な仕事をなくすために、トヨタでは「標準化」と「横展」という取り組みが行われています。

 標準化というのは、業務のマニュアルを作っていく仕事のことです。トヨタではどんな業務も標準化され、作られたマニュアルは日々更新されていきます。あらゆる業務を標準化することで、新人でもすぐに仕事ができるようになるので、仕事の属人性がなくなる上、新人教育の時短も実現されています。

 マニュアル作りに取り組む会社は多いと思いますが、トヨタではマニュアル作りのためのミーティングが設けられ、マニュアル作りにチームで取り組んでいることが特徴です。一人でマニュアルを作ろうとすると、上手くいかなかったり視点が偏ってしまったりしがちですが、時間を取ってチームで取り組むことで、社員全員にとって分かりやすいマニュアルを作ることができます。

 標準化したものは会社の資産になりますし、将来的に時間を生むものなので、トヨタでは高いプライオリティで実践されています。

「横展」とはどのような取り組みなのでしょうか?

原- 横展とは、仕事のグッドケースやバッドケースを社内でシェアすることです。トヨタでは、あらゆる仕事の最後には、必ず横展が行われていました。何か良いやり方を見つけたら朝礼などで他の社員にシェアしていましたし、グッドアイディアを競う大会も会社全体で行われていました。

 プロジェクト単位で動くことが多いホワイトカラーの職場では、会社全体としてのナレッジやノウハウが溜まっていないケースがよく見られます。しかし、これだと仕事が個に依存してしまいがちです。

 誰かの悩みは誰かが解決している場合が多いですから、各プロジェクト単位でよかった取り組みや悪かった取り組みの発表会を定期的に開催するなど、社内の情報共有の場を作ることが、仕事の属人性をなくすためには必要だと思います。

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5.経営をラクにするために経営者が最優先でするべきこととは

最後に、経営者がもっとラクになるために、一番取り組まなければならないことを教えてください。

原- 本当に経営者がするべきことは、会社のビジョンやゴールを社員に伝え続けることだと思います。ただ仕事の指示を与えたり、役職を与えたりするのではなく、会社が存在している意義や仕事の意義、世の中に対する価値を社員一人ひとりに理解してもらい、仕事に臨んでもらうということが、経営者が最優先で行わなければいけない活動です。

 ビジョンを発信するといっても、会社視点のものを一方的に発信するのではなく、社員一人ひとりにひも付けて語ってあげることが重要だと思います。例えば、「顧客満足の最大化」というビジョンを掲げられても、社員たちはピンとこないでしょう。「あなたがこの仕事をすると、どうなるのか」といったように、ビジョンを具体的に語ることが重要です。

 会社の存在意義や方向性を常に社内に発信し続けることで、会社全体の意識が変わり、会社の生産性も上がるはずです。

原さん、ありがとうございました!

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目次

  1. はじめに
  2. 数千社の経営を見てきた専門家が考える「経営が上手くいかない最大の原因」
  3. 優秀な経営者は気づくけど、なかなか実行できない10のこと
  4. あなたの会社の生産性が上がらない2つの理由
  5. システムを導入すべき理由と7つのチェックポイント
  6. おわりに