経営者インタビュー

【前編】OODAとは?公認会計士・田中靖浩氏に聞く”米軍式マネジメント”とは

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米軍発祥のマネジメント その名は「OODA」

「軍隊式人を動かすマネジメント」この言葉を聞いて、どんな組織をイメージするだろうか。おそらく「スパルタ」「厳しい」「命令には絶対服従」といった言葉がまず頭に浮かぶだろう。しかし、実はここ数年で米軍マネジメントは、大きな変化を遂げ、規律重視の組織から大胆な権限移譲を進め「部下に任せる」自主的な組織を編成している。

今回は、米軍の戦いの主流プロセスであるOODAを紹介するために「米軍式 人を動かすマネジメント」の著者でもある公認会計士である田中靖浩氏に、OODAをビジネスに活かす「機動戦経営」についてお話を伺った。前編・後編に分けてお届けする。

お話を伺った方

田中 靖浩 氏
田中靖浩公認会計士事務所所長 公認会計士
東京都立産業技術大学院大学客員教授

ooda

1963年三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社を経て現職。中小企業向け経営コンサルティング、経営・会計セミナー講師、執筆、連載を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。
難解な会計・経営の理論を笑いを交えて解説する「笑いの取れる異色会計士」として活躍中。
主な著書に「経営がみえる会計」「クイズで学ぶ孫子」「40歳からの名刺を捨てられる生き方」ほか多数。

目次

【前編】
(1) 米軍式マネジメント法「OODA」
(2) テクノロジーの発達がもたらす光と闇
(3) PDCAとOODAの違い

【後編】
(4) PDCA人間はモテない
(5) 部下の失敗をゆるせるか?
(6)「管理する時代」から「信じる時代」へ

(1)米軍式マネジメント法「OODA」

-今回の新刊「米軍式 人を動かすマネジメント」について筆を取った理由を教えてください。

田中靖浩氏(以下、田中)- 理想に現実を近づけるため、IT技術を導入し、リアルタイムで社員を管理していく方式は、一見すると効果的に感じます。しかし、長期的目線でみると管理が強化されるほど、社員の精神は疲弊していくことになります。疲弊によって作業効率が落ちてくると、上司はさらに管理を強化し、目標を達成しようと部下の尻を叩きます。そうやって負のスパイラルに陥っていくのです。この現状を肌で感じ、次第に「経営計画および予算」というフレームワークに懐疑心を抱くようになりました。そんな中、自衛隊の知人からアメリカ軍のマネジメントOODA-(ウーダ)について教えてもらいました。

「軍隊」といえばトップダウンのイメージが強く、上の命令に対してノーと言えない組織を連想するのではないでしょうか。しかし、現在の軍隊組織のあり方はかなり変容してきています。ベトナム戦争(1965年)以前のアメリカ軍は「トップダウンによる徹底管理の組織」でした。しかし、イラク戦争(2003年)以降、「兵士の自主性を認めた機動戦」に変えたところ、隊の損傷を劇的に抑えることに成功します。湾岸戦争において、イラク軍と多国籍軍(アメリカ中心)の勝敗を分けたのは、「計画と管理」の体制の違いでした。イラク軍は組織の徹底管理と綿密な計画をし、戦いに臨みました。一方で、多国籍軍は計画をしながらも、兵士に一定の柔軟さと臨機応変な行動を認めました。その結果、イラク軍は想定外の事態に対して柔軟な修正ができず、臨機応変な多国籍軍に敗れてしまいました。

軍隊に限らず、トップダウン型式の組織より、急な変化にも対応できる機動型組織を作れるチームが生き残っていきます。この考え方を、経営の世界観にインストールできればうまくいくのでは?という思いから、執筆に至りました。

(2)テクノロジーの発達がもたらす光と闇

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-田中氏は公認会計士ですが、大手企業の監査はやらず、経営者に経営指導やマネジメント手法を伝えることに積極的ですよね。その真意を教えてください。

田中- それは会計士の働き方に変化が出てきたためです。バブルが崩壊してから、つくれば売れるという時代は終わり、計画的な戦略を練らなければ、ものが売れない時代になっていきました。そこで会計士は経営計画を考え、その目標を設定することによって、企業が目標を達成させるために社員を管理していくという流れになっています。かつては不況になるほど、会計士は儲かる職業でした。

2000年前後のITバブルが来る前までは、公認会計士がアナログで作業をしていたので専門職として重宝されていました。しかし、IT技術の発達により会計ソフトウェアが広まり始め、それまで会計士が行っていた業務はソフトウェアに取って代わられました。

さらに、大企業ほど会計管理はアジアなどの人件費が安い国に委託するようになり、かつての公認会計士の業務は、相対的に価値が下がっていきます。そんな苦境の中、公認会計士として生き残って行くためには、仕事を臨機応変に展開していくことが求められ、経営計画および予算を支援してゆく方向へとシフトしていきました。

私は経営コンサルティング、会計セミナーといった堅めの仕事から、 落語家・講談師との公演など柔らかい仕事まで幅広く活動をしています。仕事の幅を広げることによって、世の中の変化に対応していこうと日々試みています。

(3) PDCAとOODAの違い

-米軍式マネジメントのキモとなる「OODA」と「PDCA」の違いをわかりやすく教えていただけますか?

田中- PDCAサイクル)は、事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手法の一つで、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の 4 段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善するプロセスを辿ります。

このPDCAサイクルがうまく機能していれば問題ないのですが、多くの企業は悪いPDCAサイクルに陥っているのが実情です。たとえば、

Plan(計画) 現状を踏まえない無理な計画
Do(実行)  ウソつき、受け身体質を生むマイクロ・マネジメント
Check(評価)視野狭窄を生む短期的なチェック
Act(改善) 十分に検証されないまま対前年比なチェック

という状況に陥っている企業がたくさんあると危惧しています。

-では、一方でOODAは?

PDCAは自分中心の考え方であるのに対しOODAは相手中心の考えです。OODAは「相手をよく観察して出方をうかがう」意思決定プロセスです。

Observe=観察
とにかく、相手をよく観察すること。自らの計画に固執することなく、相手の出方をみる。
Orient=方向づけ
過去の経験や知識を総動員して状況を判断する。
Decide=決心
自分自身の選択に責任を持ち、実行することを決める。
Act=実行
決心から実行に移す。

決まり切った計画に頼るだけでなく、自ら「動く」個人を育てる。これがOODAを実践していく上での基本的な姿勢となります。

【後編はこちら】

 

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田中靖浩氏の新刊!「米軍式 人を動かすマネジメント」

 

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